よくある質問 I FAQ

法律問題の
ご質問とアドバイス

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離婚問題について

Q

法人(会社)や子どもなど第三者名義の預金は財産分与対象となりますか。

A

法人(会社)名義の財産でも実質的に夫婦の協力で得られた財産は財産分与対象となる余地はありますが、現実にはその証明・評価が困難なことが多いです。子ども名義の預金は、預金が作られた趣旨・目的にもよります。

1 会社など法人の預金
夫婦の一方が経営している会社等の預金については、基本的には対象となりません。それは、当該会社等の株式や出資持分を分与対象として扱い評価すれば足りるからです。
夫婦の実質的共有財産であるにもかかわらず名義のみが法人とされているような場合には、対象として扱う余地は考えられますが、現実にはそのような立証が困難となることが多いでしょう。

2 医療法人の場合
(1) 出資持分あり医療法人
2007年4月より前に設立された医療法人であれば、出資持分なし医療法人に移行していない限り、出資持分があります。この場合、定款の定めにより、出資持分権者が死亡や脱退した場合には、法人の財産全体からその持分割合に応じて金銭支払いを受けることができます(最高裁2010年4月8日判決)。
そのため、出資持分も株と同様に財産的価値があることになります。
もっとも、あくまで脱退したり法人が解散した場合にしか出資持分に基づく金銭請求権は生じないので、株ほどには換価性があるとは言い難く、裁判例では、96.77%の出資持分について、法人の純資産評価額の7割相当の価値だと判断された例があります(大阪高裁2014年3月13日判決)。
(2) 出資持分なし医療法人
他方で、2007年4月以後に設立された医療法人は出資持分が最初からなく、社員であっても勤務して給与や役員報酬を受けるのとは別個に剰余金が配当されることはありません(医療法54条)。
そうなると、医療法人を経営している当事者に対しても、医療法人の財産を財産分与の対象とすることはできないということになります。
もっとも、法改正が最近であるだけに、この点の裁判例は見当たりません。古い裁判例ですが、医療法人が実質上個人経営と大差ない実情である場合に「財産分与の額を決定するに当っては、同法人の資産収益関係をも考慮に入れて然るべき」と判断された例も存在します(福岡高裁1969年12月24日判決)(出資持分を財産分与対象とするという請求の立て方をしていなかったと見られます)。
そのため、出資持分なし医療法人だから法人の財産は完全に対象外になるとも限りません。

3 子ども名義の預金
子ども名義の預金については、子どもがアルバイトなどで得た収入によるような場合は子ども固有の財産として財産分与の対象から外れます。他方で、夫婦の財産で形成した預金であれば、財産分与の対象として扱うことになります。
財産分与の基本的な考えからすればこのように言えますが、事案によっては、子どもに贈与されたものと扱って、財産分与の対象から外している例も存在します(大阪高裁2016年 7月21日判決、大阪高裁2014年 3月13日判決、高松高裁1997年3月27日判決)。