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子どもを監護していない夫(別居中)が児童手当を受け取っている場合、その児童手当を返してもらえないですか
児童手当は子どもと同居している親が受け取ることになるので、別居している親が受け取った場合は返還請求できます。
児童手当は子どもを「監護し、かつ、これと生計を同じくする」親に受け取る資格があります(児童手当法4条1項1号)。
一般には、別居している親は「監護」しているとは言い難いので、受け取る資格はありません。
また、仮に別居親が婚姻費用を分担していることで「監護し、かつ、これと生計を同じくする」と見る余地があるとしても、同居している親がいる場合には同居親が受け取る資格があります(児童手当法4条4項)。
したがって、別居親は法律上の根拠なく児童手当を受け取っていることになるので、同居親から別居親に対して、不当利得返還請求をできます。
請求方法としては、本来的には、訴訟を起こすことになります。もっとも、婚姻費用分担審判において、別居親が受け取った児童手当分を本来の婚姻費用額に加えて支払を命じることで実質的に返還を命じた例もあります。
〇 東京地裁2018年11月19日判決
妻から、別居中の夫に対し、夫が受給していた児童手当の返還等を請求した事件で、以下の通り判断して請求を認めた。
「児童手当の受給要件については,父母が児童と同居している場合は,当該児童の生計を維持する程度の高い者によって監護され,かつ生計を同じくするものとみなされるとしても,父母が別居している場合には,当該児童と同居している父又は母によって監護され,かつ生計を同じくするものとみなされるから(児童手当法4条),別居親が受給した別居期間を対象とする児童手当については,別居親が同居親との関係で法律上の原因なく利得しているとみて,別居親から同居親に支払われるべきである。原告は,平成28年2月22日から被告と別居して長男を監護養育しており,被告が受給した同月分及び翌3月分の児童手当合計3万円(本件児童手当金)のうち平成28年3月分の1万5000円については,被告が原告との関係で法律上の原因なく利得しているとして,被告から原告に支払われるべきであり,これに反する被告の主張は採用しない。」
〇 東京地裁2017年11月6日判決
元妻が元夫に対して、元夫が別居後も受け取っていた児童手当の返還等を請求した事件で、以下の通り判断して請求を認めた。
「児童手当の受給資格者は,『児童を監護し,かつ,これと生計を同じくする父又は母』であるところ(児童手当法4条1項1号),被告は,平成23年3月7日に原告が子らを連れて本件マンションを出た後,子らとの交流もなかったものであり(甲21,乙16,原告本人,被告本人),子らの生活について通常必要とされる監督と保護を行っていたとは認められず,子らを『監護』していたとはいえない。
そうすると,被告は,子らを監護していたとは認められない同月8日以降の分の児童手当に関しては,その受給資格を有していなかったものと認められ,同日以降,子らを監護し,かつ,子らと生計を同じくしていたと認められる(甲21,乙16,原告本人,被告本人)原告との関係において,上記児童手当相当額を不当に利得したというべきである。他方,同日より前の分の児童手当に関しては,受給資格を欠くものとは認められない。」
〇 福岡高裁2018年7月19日決定
別居中の妻から夫に対して婚姻費用の分担を求めた事案において、別居してから夫が受領していた児童手当を妻に交付していなかったことについて、児童手当は子育て支援のために支給されるものであり、夫が本来負担すべき婚姻費用とは別に子の監護者に支給され、子育て支援に充てられるべきものであるとして、夫が受領していた児童手当分を加算して支払を命じた。