よくある質問 I FAQ

法律問題の
ご質問とアドバイス

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離婚問題について

Q

婚姻費用・養育費の金額を決めるのとは別に「子どもの学費を負担する」という合意をしましたが、学費の金額は取り決めていません。この合意に基づいて学費を請求できますか。

A

合意内容としていかなる費用を負担するのか明確であれば、請求できます。

1 取り決めの有効性
婚姻費用・養育費の金額を当事者の合意で取り決めることは多々行われており、算定表どおりに合意しないといけないこともないし、決まった金額で取り決めないといけない理由もありません。
一定の費目・負担割合等を取り決める合意内容も当事者の合意であれば有効であり、その合意に従って請求できます。

2 請求方法
もっとも、このような合意だと請求できる金額が合意内容(合意した書面・調停調書等)からは一義的に定まらないので、公正証書や調停・訴訟上の和解で合意していても、改めて訴訟を起こす必要があります。
また、費目を明確にしておかないと、子どもにかかるいかなる費用までが負担の範囲になるのか等をめぐって再度争いになることもあります。合意に至る経緯等にも左右されますが、「学校等の受験,入学,進学,留学のための費用」という取り決めで授業料の分担まで認めた例(文言から広げたといえる例)もあれば、文言通りに限定した例もあり、予測が困難になる面もあります。合意条項をよく考える必要があります。

〇 東京地裁2019年9月4日判決
訴訟上の和解で、養育費の支払金額とは別個に、「被告と原告は,長男に要する学校等の受験,入学,進学,留学のための費用は,2分の1ずつ負担することとし,被告は,これを,原告から上記費用の負担の請求及び同費用の資料の送付を受けた日から1か月以内に第3項記載の口座に振り込む方法により支払うこととする。」という取り決めをして離婚した事案。
離婚後、この合意条項の解釈をめぐって争われた裁判では、この条項の文言が「『学校等の』という限定のないものとなっており,小学校に係る費用をも対象とするものと解し得る規定ぶりであった上,『受験,入学』とは別に挙げられている『進学』に入学金等の一時金のみならず在学中の授業料等をも含めて解釈したとしても,特段不合理ではないとの文言解釈についての判断を示したほか,長男の両親である原告と被告の職種や収入にも鑑みると,被告において,本件和解に当たって,第6項において長男が本件小学校を含む私立小学校に入学した場合の授業料等をも対象とするものであることを黙示に同意したものと評価するのが相当である旨の理由を述べつつ,本件和解の第6項は,本件小学校の授業料等も対象とするものであるとの判断を示した」判決が確定していた。
そこで、上記判決も、前判決を踏襲して小学校の授業料等の分担の請求を認めた。

〇 東京地裁2017年12月8日判決
訴訟上の和解で離婚し、養育費の支払金額とは別個に、「被告は,原告に対し,長男Aが大学に進学した場合には,大学の入学金及び授業料の半額を支払う。ただし,原告は長男Aの進学先等を決める際には,被告に事前に協議するものとし,原告がこの協議を怠った場合には,前文の限りではない。」と取り決めがされていた事案。
上記判決は、合意に基づく請求を認めつつ、以下のとおり判断して、納付された「施設設備費」「学生傷害共済補償費」「父母会」「同窓会費」の分については請求を認めなかった。
「一般に,我が国の大学においては,『入学金』や『授業料』のほか種々の名目で金員の納付が求められることが多いことは公知の事実であり,かつ,子が将来大学に進学したときに備えてその学費等に関する養育費の分担を協議するに当たっては,上記のような実情を踏まえて,名目の如何を問わず子が進学した大学に納付しなければならない金員につき分担することを意図する場合には文言上もそれが明らかになるような条項とすることも容易であるのに,本件和解条項においては『入学金及び授業料』とだけ記載されていることに鑑みれば,原告の内心はともかくとして,少なくとも被告との間で意思が合致し,協議が調ったのは『入学金』と『授業料』の半額という範囲であると解さざるを得ない。」

〇 東京地裁2014年5月29日判決
協議離婚に当たって当事者が合意した合意書において、毎月の養育費の金額の取り決めとは別に、以下の合意内容があった事案。
「長女Aにかかる特別の費用として,次のとおり支払う。
(ア) 学費(入学費,授業料,施設費その他名目の如何を問わず就学先に対する納付義務を負うもの)実額
ただし,大学については,初年度180万円,2年目以降160万円を上限とし,これを上回る場合には,上回る部分について別途協議する。大学院については,別途協議する。
(イ) 受験料 実額
ただし,8校分を上限とし,これを上回る場合には,上回る部分について別途協議する。
(ウ) 塾代 実額
ただし,年額60万円を上限とし,これを上回る部分がある場合には,別途協議する。
(エ) 制服代 実額
(オ) 留学費用 別途協議する。
(カ) 歯科矯正費用 別途協議する。
(キ) 傷病時の入院・治療関係費 実額」
上記判決もこの合意を有効と認めて合意に基づく請求を認めた。

〇 東京地裁2011年11月25日判決
婚姻費用分担調停で婚姻費用額とは別に以下の条項で調停が成立した後、離婚訴訟の判決で離婚した事案。
「当事者間の長男A(昭和62年○月○日生)の学校から請求される授業料等学校関係費用並びにアトピー治療のために必要な病院の費用及び通院のために必要な同長男の往復の交通費(宿泊が必要な場合は宿泊費を含む。)は相手方が負担する。」

上記判決は以下のとおり判示して、上記調停条項は離婚後も有効であると判断した。
「本件調停の調停条項をみると,1項においては,『相手方は,申立人に対し,別居期間中の婚姻費用の分担として,平成14年3月から双方が別居解消又は離婚に至るまでの間,1か月金15万円ずつを毎月末日限り,・・・支払う。』とされており,婚姻が継続している間の費用についての合意であることが文言上示されているが,本件調停条項を含む2項においては,上記のような期間を限定する趣旨の文言は入れられていない(甲3)。また,本件調停条項に規定された合意内容に鑑みても,その合意が,婚姻期間中に限り有効と解さなければならないものであるということはできない。
以上によれば,本件調停の調停調書は,少なくとも本件調停条項を含む2項については,原告と被告との離婚により効力が消滅したということはできない。」

その上で、請求された費用のうち、予備校費用については調停条項に基づく請求を認め、他方で、大学で購入した書籍については請求できる範囲から除外した。
「文言上は,一般的にいえば予備校も一種の『学校』であるといって差し支えない上,実質的にみても,予備校に通うことは,大学を受験する者にとってごく一般的な行為であり,多くの者にとってそれが必要であるともいえることからすると,その費用が「学校関係費用」に含まれないと解することは,本件調停成立時の当事者の合理的意思及び一般の社会通念に反する結果となるというべきである。」
「別紙『教科書等購入一覧』記載の各項目についてであるが,それぞれ領収書等が証拠として提出されているものの,そこで購入された書籍等が大学から求められて購入したものであると認めるに足りる証拠はなく,その購入費用が『学校から請求される』『学校関係費用』に当たると認定することは困難といわざるを得ない(なお,授業料が学校から請求されるものであることは余りにも当然であるから,『学校から請求される』との文言が『授業料』に係るものであると解することはできない。)。」

〇 東京地裁2007年3月2日判決
離婚調停で、子どもらの養育費の金額の取り決めと別に、以下の取り決めがされた事案。
「被告は、同人ら〔子どもら〕の入学金、授業料、修学旅行などの課外活動費等の学費(ただし、所属学校に対して直接支払うべき金員)及び入学諸雑費、部活の合宿費を別途負担する。
また、被告は、長女が塾に通った場合にはその費用(高校1年から3年までの間)を月額2万円を限度として負担する。
月額5万円以上の医療費の負担については、被告は別途協議に応じる。」

上記判決は上記合意に基づく請求を認め、また、負担する範囲(私立学校学費も含むか、部活費用も含むか)について以下のとおり判断した。
「前記認定によれば、離婚調停成立時、長女と二男は私立学校に在学していたこと、長女は私立学校への進学を予定していたこと、長女と二男が在籍していた私立学校はいわゆる一貫校であること、被告と長男も小学校から大学まで私立の一貫校に通ったこと、長女と二男が在学していた私立学校を退学することが相当な特別な事情はなかったこと、被告は離婚調停成立後の平成14年1月になって私立学校を退学することを求めたこと等が認められる。
これらの事実によると、調停条項2(1)の学費等については、私立学校の学費等を含むと解することが相当である。なお、同項中の『部活』について、大学の同好会を除く合理的な理由が認められないから、これを含むと解すべきである。」

〇 東京地裁2006年10月30日判決
離婚に際して、公正証書で養育費の金額とは別に以下の取り決めがなされた事案。
「第4条 甲は,前条の養育費とは別に,丙及び丁の学費(丙については,短期大学を卒業するまでの授業料その他の学費,丁については,高校,大学又は専門学校を卒業するまでの授業料,入学金,寄付金等の諸費用及び制服代等)を負担するものとし,その支出をする必要が生じた都度これを乙の指定する方法によって乙に支払う。」

上記判決は公正証書の取り決めに基づく請求を認め、負担する範囲として以下のとおり判断した。
「本件公正証書の記載によれば,本件合意によって被告が負担することを約したものは,『学費(高校,大学又は専門学校を卒業するまでの授業料,入学金,寄付金等の諸費用及び制服代等)』というのであり,その文言からみて,学校で授業を受け,単位を取って卒業するために通常必要な費用を包括的に含むものと解され,特段の限定があるものとみることはできない。……被告指摘の『特別授業料』は,単位をとるために必要な費用であったことが認められるところであり,本件合意にいう学費に含まれると解され,その範囲外であると解することはできない。また,被告は,『送金手数料,教材費』も本件合意による負担約束の範囲外であると主張するが,送金手数料は,授業料等を納めるために要したものであって,授業料の支払について振込の方法が使われることは通常のことであるから,これを範囲外とすることはできないし,上記『教材費』も,対応する前掲各証拠……によれば,B1が通学していた美術専門学校における学業に通常必要な範囲内のものと認めることができ,これらが本件合意による負担約束の範囲外であると解することはできない。」
「さらに,被告は,B1が美術専門学校卒業後,入学した東京都菓子学園に関する費用につき,本件合意の範囲外であると主張するが,本件合意の内容は前記のとおりであって,被告は,B1が『大学』に入った場合には,その『学費』を負担する旨約束したものと解されるところであるから,少なくとも大学の通常の在学期間である4年間の学資までは約束した負担に含まれると解される。……B1は,平成15年度から3年間美術専門学校に通っていたものであるが,同校卒業後,同校で学んだことを生かしつつ将来の職業のため,平成18年度から1年間の予定で,卒業試験に合格すれば東京都知事からパン・菓子製造科技能士補の資格を授与される職業訓練校である東京都菓子学園に入学したことが認められ,上記入学の動機,経緯及び期間も計4年間と大学の通常の在学期間と同じであることに鑑みると,本件合意の範囲内と認めるのが相当であり,これを本件合意の範囲外と解することはできない。被告は,B1が,御茶の水美術専門学校に入学し,卒業後,更に東京都菓子学園に入学することは,本件合意当時予定した範囲を越えるかのように主張するが,本件合意当時である平成12年6月には,昭和59年○○月○○日生のB1は,15歳だったのであり,その後の進学予定が確定的でなかったことは当然であり,それゆえ本件合意において『高校,大学又は専門学校を卒業するまでの』学資と表現されたものと解され,この段階で,3年間の専門学校進学が確定していたのではないことは本件合意の文言からも明らかであるというべく,少なくとも4年間の学資は,予定された範囲内と認めるのが相当であり,この判断を覆すに足りる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。」

〇 広島地裁1993年8月27日判決
離婚調停において一定額の養育費の取り決めのほかに、「現に通学中の学校及び将来進学する学校の授業料、教科書代、教材費、通学のための交通費、受験費、入学費その他一切の教育に関する費用を、その必要を生じた都度支払う」との取り決めをした事案。
上記判決は、この取り決めについて以下のとおり判断して、該当する費用について請求を認めた。
「『一切の教育に関する費用』には、教育に直接必要な費用のみならず、子らの教育に間接的に必要な費用も含まれるものと解すべきである。したがって、本件調停条項にいう「一切の教育に関する費用」とは、例示された『授業料、教科書代、教材費、通学のための交通費、受験費、入学費』以外の学校に支払うべき費用(クラブ活動も学校教育の一環であるから、その費用はこれに含まれる。)のみならず、学校教育を受ける際に必要な学用品や制服などの購入費用、学校教育を補完し進学準備のために一般に必要とされる塾や予備校の費用などを意味するものと解される。
他方、本件調停条項の他に養育費に関する条項が設けられていることに照らすと、給食費は、通常の食費の一部として、養育費によってまかなわれるべきである。また、子らが個人的興味に基づいて行う活動に要する費用は、本件調停条項が予定する費用に該当しないものとみられる。」