よくある質問 I FAQ

法律問題の
ご質問とアドバイス

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離婚問題について

Q

婚姻費用・養育費を計算する上で何が収入と扱われますか

A

それぞれの性格に応じて判断されます

以下の給付等について、説明します。
(1) 生活保護費
(2) 児童手当・児童扶養手当、高等学校等就学支援金
(3) 子どもの収入
(4) 親の援助
(5) 年金収入
(6) 雇用保険による給付など
(7) 結婚前からあった資産

1 生活保護費
生活保護は、夫婦相互の扶養でなお足りない場合に支給されるものなので、権利者が既に生活保護を受けていても、収入として扱われません。

2 児童手当・児童扶養手当、高等学校等就学支援金
これらの手当は、専ら児童の福祉や高校教育の負担軽減という特別な目的のためであり、家族の生活費とは別個のものとして、収入としては扱われません。

3 子どもの収入
子どもがアルバイトなどにより収入を得ていても、収入として扱うことは基本的にはありません。
もっとも、子どもの収入が相当程度に達していれば、そもそも扶養すべき未成熟子として扱わないことはあり得ます。

4 親の援助
一方が親から援助を受けていても、夫婦間の義務が優先するので、収入として考慮されません。

5 年金収入
年金は収入として扱われます。また、年金収入には職業費がかからないので、基礎収入算定に当たっては修正されることになります(額面が同じでも、通常の収入よりも多いものとして扱われる結果になります。)。
障害年金については、障害者自身の自立や介護への資金援助の面もあるので、全てが収入とは扱われないこともあり得ます。

6 雇用保険による給付など
雇用保険による失業給付や傷病手当などは、本来の収入の代替ともいえるので、収入扱いすることになります。職業費がかからず修正を要する点は年金収入と同様です。

7 結婚前からあった資産
基本的には、生活費は収入からまかなわれるものであり、継続的に資産を取り崩して生活費に充てることはないので、通常は資産を収入として扱うことはありません。もっとも、多額の資産があることが婚姻費用分担額を決める上で一定の考慮がなされることはあり得ます。
また、相当の資産を築いて定年退職するなどして、資産を取り崩して生活しているような事情であれば、資産の取崩しも収入として計算することはあり得ます。
他方で、資産から生じる賃料収入などの収入は、これを収入から除外すべき理由もないので、収入として扱われるのが原則です。
〇東京高裁2020年11月27日決定
80歳以上の年齢である父親(義務者)が、一旦決められた養育費金額について、会社役員を退任し、不動産も売却して不動産賃料収入を失ったことなどを理由に養育費減額を求めた事案。
東京高裁決定は以下のとおり判断して減額を否定した。あくまで減額事由の有無としての判断だが、この考えからすれば資産の取り崩しも収入と扱われることになる。
「相手方は、情報通信関連の会社の取締役などの役職を歴任し、前件審判当時年収2000万円を超える高額な給与収入を得ていたことや、年間800万円を超える不動産収入を得ていた不動産を売却したことから、これまでにかなりの資産を蓄積しているものと推測される。そうすると、高齢となって会社役員を辞任し、給与収入がなくなったとしても、これまでの経歴や地位に照らし、資産を取り崩してある程度従前の生活水準を維持しようとすることが想定される。ところで、未成熟子に対する養育費の支払義務は、いわゆる生活保持義務であり、子の生活水準を親の生活水準と同程度に維持する義務であるから、相手方が資産をどの程度保有し、そこからどの程度生活費として費消しているかを解明しなければ、適切な養育費の金額を決めることは困難である。しかし、相手方は、抗告人から財産開示を求められ、当裁判所からも資料の提出を求められたのに、自己の資産について一部を開示したのみで、全体の資産の開示を拒んでおり、不動産の売却代金の使途なども明らかにしていない。そうすると、相手方の収入の減少だけでは養育費の金額を減額すべき事情の変更と認めるに十分ではなく、相手方の保有資産額や、日常の収支などが明らかにならないと適切な養育費を判断することができないから、本件においては、前件審判によって定められた養育費の金額を減額すべき事情の変更があるとは認められない。」