よくある質問 I FAQ

法律問題の
ご質問とアドバイス

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離婚問題について

Q

不倫をした配偶者や不倫相手の勤務先に不倫の事実を知らせても構いませんか

A

名誉棄損又はプライバシー侵害により賠償責任が認められている例があります

一般的に言って、たとえ職場不倫であっても不倫する当事者の意思で行うものであり、勤務先はこれを是正する立場にありません。まして職場不倫でなければ、勤務先がなにかできる根拠もありません。
他方、不倫は私的なことですから、プライバシーも及びます。

そのため、裁判例としては、不倫の事実を勤務先に知らせた行為については、不法行為が認められている例が多数です。

1 東京地裁2021年1月27日判決
b社に勤務し雑誌「a」の編集長を務める男性が部下の女性(A)と不貞関係になった事実関係の下で、Aの元夫が、Twitterアカウント名に「a誌編集長YとAのW不倫で,家庭を壊されました」との記載を入れて、アカウントの自己紹介欄に「a誌という雑誌の編集長Y氏とその部下だった元妻AのW不倫によって家庭を壊され,子ども達と一緒に苦しみながらも楽しく暮らしているシングルファザーです。恥ずかしいですけど,事実を少しずつ書いていきたいと思っています。」との記載を入れて、b社の5つの公式アカウントをフォローしたほか,複数のマスメディアの公式アカウントをフォローした行為について、以下のとおり判断して不法行為を認めた。
「原告による本件アカウント作成等により,被告の勤務先の同僚らが,被告とAの不貞行為を知るにいたったことが認められ,原告による本件アカウント作成等の行為は,被告の名誉を毀損するとともに,被告のプライバシー権を侵害するものといえる。
原告は,本件アカウント作成等は伝播性がないとするが,被告の同僚等が本件アカウントを見ることができる状況にあったことは上記認定のとおりであって,その主張は採用できない。
また,原告は,名誉毀損について違法性阻却事由があるとも主張するが,ツイッターのアカウント名と自己紹介文を被告とAの不貞行為の暴露に利用するというその方法や,抗議を受けて直ちに撤回した経過などからすると,被告の不貞行為を社会に訴えかけるのが正当な行為であるという認識のものと行ったものとは考え難く,むしろ私怨を果たすことを目的にした行為であると認められ,名誉毀損について違法性阻却事由があるとは認められない。」

2 東京地裁2019年3月26日判決
精神科医同士の夫婦が、妻(原告A)の不貞により離婚した後、元夫の兄が、原告Aの勤務先など各所に不貞の事実等を知らせる手紙を送付するなどした行為について、以下のとおり判断して不法行為の成立を認めた。
「上記各手紙には,原告らが不貞行為を行ったこと,原告Aが妊娠したこと,原告らが中絶同意書を偽造したこと,原告Aが中絶手術を受けたことなどが記載されていること,……L宛の手紙……及びe病院の副病院長宛の手紙……には,原告Aの日記の内容(「原告Aは不倫内容を日記に記載し,(不倫相手の性器を)『欲しい。欲しくて身体があつい。子供ができてしまったのにまだ欲しい。』ととんでもない日記を書いています。これこそ原告Aは,精神病ではないでしょうか?」)が記載されていることがそれぞれ認められる。
上記各手紙の内容は,原告らの社会的評価に相当程度影響を与え,その事柄の性質上,私生活上の事実で公にすることを欲しないものであろうと考えられることを考慮すると,被告Cの上記記載内容の各手紙の送付行為は,社会通念上受忍すべき限度を超えて原告らの生活の平穏を侵害するものと認められるから,不法行為上違法な行為に当たるというべきである。」

3 東京地裁2016年10月17日判決
不貞配偶者、不倫相手のいずれも官庁勤務の国家公務員であったところ、不倫された配偶者が、25人程度の国会議員の議員会館事務所に宛てて、不倫の事実等を知らせる以下の内容のファックスを送信した行為について、名誉毀損であるとして賠償責任を認めた
(ファックス内容)
「はじめまして。私は△△省に勤務している者です。
過日,△△省◇◇局□□部◎◎課課長Y1(被告)に対し,別添の訴状のとおり,東京地方裁判所に被告の不貞行為による損害賠償請求訴訟を提起いたしましたので,ご参考までにお知らせします。
このことは2週間以上前に職場(△△省)に連絡済であり,起訴内容について今後裁判で被告と争っていきます。もちろん不貞行為の確実なる証拠は確保しております。
なお,被告にも妻子があり,この不倫が原因で私の家族は崩壊しておりますが,国家公務員の管理職という立場にありながら,部下の女性職員と不倫を行い,その夫に対して,未だに何の謝罪も行っていない被告は絶対に許せません。裁判は原則公開ですので,今後は社会に対しても被告の責任を訴えていく所存です。
※ 申し訳ございません。訴状の一部を黒塗りとさせていただいております。」
(裁判所の判断)
「一般人の通常の注意と読み方を基準とすれば,これらの内容は,単に原告が被告に対して訴訟を提起したという事実を摘示するにとどまるものではなく,被告が原告の妻と不貞行為を行ったこと,少なくとも被告が原告からその妻と不貞行為を行ったことを相当に高度な確度をもって疑われ訴訟提起されるに至った人物であるとの印象を与えるものであり,被告の社会的評価を低下させ,その名誉を毀損するものであることは明らかである。これに反する原告の主張は採用することができない。」

4 東京地裁2015年 7月30日判決
離婚後に、元妻(原告)が不貞行為をしていたなどの事実を第三者に流布した元夫の以下の行為について、名誉権・プライバシー権を侵害する違法な行為であるとして不法行為の成立を認めた。
「原告の親戚等に対して,原告の不倫が原因で婚姻生活が破綻したこと,原告が被告に対して再三にわたって嘘や偽りを述べたこと,残りの人生をかけて原告を恨み・呪い,できる限り合法的な復讐を成し遂げたいなどと記載した葉書を送付した。」
「原告が以前に勤務していた会社の社長や社員及び取引先に対し,原告になりすまして,原告が不倫をしていたことなどを記載したメールを送信した。」
「原告の親戚や友人ら多数人に対し,同メールと同内容の書面を送付した。」
「被告は,同人のいわゆるフェイスブック上のページに,…同内容のメールを掲載した。」
「原告が以前に勤務していた会社の社員や友人ら多数人に対し,原告と被告が離婚に至った経緯に関する事実,原告が不貞行為をしていた事実を記載したメールを送信した。」
「原告の両親や友人ら多数人に対し,原告と被告との婚姻生活が破綻した経緯に関する事実や,原告が不貞行為をしていた事実等を記載した書面を送付した。」
「原告の実家の近所の家々に,同メールと同内容の書面に,『お世話になった御近所の皆様へ』と記載した上で,多数投函した。」

5 東京地裁2015年6月3日判決
夫(A)が、夫の経営する会社の営業担当者である女性(原告)と不貞関係にあった下で、妻(被告)が、女性の勤務する保険会社の支社長宛に不貞行為をしたなどの以下の通知を送付した行為について、以下のとおり判断して不法行為を認めた。
(通知内容)
「原告がAと不貞行為をしていたことが判明したため、a生命においても、原告の使用者としての責任に鑑み、原告に厳正な処分をするほか、原告が公的にも私的にもAと今後一切関係を持たず、Aの会社に出入りせず、被告、被告の家族、自宅及びAの会社に近づいたり連絡したり危害を加えたりせず、法人会に出入りしないことを誓約するよう、a生命として誠実な対応をお願いしたい、また、被告側の個人情報が原告に知られており、原告が自宅近くまで来ようとしたりして家族が怖い思いをしているため、個人情報についてa生命がどのような対応をするかを検討の上、速やかに報告されたい旨」
(裁判所の判断)
上記通知をするのと同日に依頼した弁護士からも女性宛に内容証明郵便を送っていることなどから、「(妻は)勤務先に不貞の事実を認識させることにより原告に社会的制裁を加える意図も有していたことがうかがわれる。そうすると、原告とAの不貞関係が事実であることや、原告とAの関係がa生命の営業担当者と取引先という関係であって、a生命に対し管理監督責任を追及したり会社としての対応を求めたりすること自体は直ちに不当とはいえないことなどを考慮しても、被告による内容証明②の送付は方法として相当性を欠くものであり、原告の名誉を毀損する不法行為を構成するというべきである。」

6 東京地裁2014年12月9日判決
元妻が、離婚後に、元夫が職場で部下の女性と不貞行為をしているなどの以下の通知を職場の上司等にメールで知らせた行為について、以下のとおり不法行為の成立を認めた。
「本件各メールは,①原告は,妻子があるのに20歳年下の職場の同僚と不倫をしていたこと,②原告が自ら不倫をしながら被告の暴力を主張して被告を家から追い出そうとしたこと,③原告が被告に不倫相手が発覚するのを恐れて若い女性を目で追いかけていたこと,④原告が不倫発覚時に証拠の奪い合いをして被告の左腕を傷つけたこと,⑤原告が,Cとともに,財産分与をいかに減らすかについて,会社のセキュリティがかかったエクセルファイルで管理し,婚姻の計画を立てていたこと,⑥原告が我孫子事務所には週に1,2度しか出勤せず,自宅から通えるのに,上野に単身赴任用のアパートを借り,不倫相手と交際していたこと,⑦原告は,原告の社内不倫により被告や子が深く傷ついても,幸せを感じることができること等を摘示するところ,①③は,原告が自分の娘と大差ない年齢の女性と社内で不倫をし,それを隠そうとする倫理観の欠如した男性であること,②は,原告が被告を虚言により誹謗中傷したこと,④は,原告が被告に傷害を負わせる暴力的な人物であること,⑤は,原告が被告と婚姻中に不倫相手と婚姻する計画を立てている男性であること,⑥は,原告が勤務時間中も不倫女性と過ごし業務を怠けていること,⑦は,原告が家庭を壊し子供を不幸せにしても自分が幸せを感じるような身勝手かつ冷酷な男性であることを摘示するから,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。」

7 東京地裁立川支部2013年 7月30日判決
妻(原告)が、市役所勤務の夫(A)と同じ市役所に勤務して不貞関係にある女性(被告)に対し、同市役所を訪れ数名の職員や来訪者がいる1階のロビーで,Aの妻であることを名乗り,Aと「不倫をしている。」「浮気をしている。」などと話しかけるなどした行為について、以下のとおり不法行為の成立を認めた。
「原告は,複数の職員や来館者がいる前で,被告に対し,不倫をしていると告げ,その声は,周囲にも聞こえる状況であったこと,原告がAの職場に書類を送るにあたり,上司に対し,電話をした際の内容は,その状況からするとAと被告の不貞行為が原因で別居したと取れる内容であることからすると,これらの原告の言動については,被告に対する名誉毀損行為と認めることができる。」

8 東京地裁2013年 1月17日判決
aスーパーで勤務する男性従業員(被告)が、同スーパーでパート勤務する女性(A)と不貞関係をもったことを、スーパーに告げた行為について、以下のとおり不法行為の成立を認めた。
「原告が,①平成23年4月17日頃,aスーパーのお客様相談室へ架電し,被告とAが不貞関係にあることを告げたこと,②同年5月2日頃にもaスーパーのお客様相談室へ架電したこと,③同月頃,被告が勤務するaスーパー◎◎店のお客様の声ボックスへ,被告と原告の妻とが不貞行為をしていることがわかる内容の投書(乙2)をしたこと,④同年8月6日頃,被告の勤務するaスーパー◎◎店に架電したこと,⑤同年10月17日頃,同店に赴き,買い物をして,レジの店員に対し,被告が同日同店にいるかどうかを尋ねたこと,⑥同年12月29日頃,aスーパー本社に架電し,被告に裁判所へ出頭するよう伝言を要求したことは原告も認めており,この範囲で争いはない。」
「そうすると,前記①,③の行為は,被告が不貞行為をしていることを不特定の者に告知するもので,少なくとも被告の名誉を毀損する行為であるといえる。また,前記⑥の行為は,前記①,③の行為と相まって,被告が不貞行為を理由に訴えを提起されていることを通知するものであって,前記①,③の行為と併せて不法行為を構成するものといえる。」

9 東京地裁2008年6月25日判決
刑務官がその地位を利用して元受刑者の妻と不貞行為をしたとして、元受刑者(原告)が刑務官(被告Y1)や国に対する損害賠償請求をしたところ、刑務官が元受刑者の行動によって社会的評価が低下したとして反訴請求をした事案について、刑務官が元受刑者の妻と肉体関係を結んだことにより、元受刑者の夫婦関係を破綻させた事実を認定して、元受刑者からの損害賠償請求を認容するとともに、元受刑者が刑務官の職場に不貞の事実を触れ回ったことについても、以下のとおりプライバシー侵害の不法行為の成立を認めた。
「原告が話した内容には,被告Y1とAの不貞関係など,同被告の私生活上の事実,しかも,第三者に知られたくない事実が含まれており,それが職場の者に話された場合,被告Y1が精神的苦痛を受けることは,明らかである。そして,上記証拠(丙4)によれば,原告の通話内容には,刑務官の不祥事を勤務先の刑務所に通告し,その姿勢を問うという部分も含まれてはいるが,上記証拠から認められる通話内容やその時期及び回数を併せて考えれば,少なくとも,その主要な目的の1つは,被告Y1を困惑させ,そのころ進められていた原告と被告Y1との間の示談交渉を有利に進めようとする点にあったものと推認できるのであり,原告の上記行為をもって,社会的相当性の範囲内にある行為と評価することは困難である。原告の上記行為は,被告Y1に対する違法なプライバシー侵害に当たる解するのが相当である。」