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慰謝料の相場はどうなっていますか
おおよその相場はありますが、裁判官のぶれが大きい面があります
1 総論
慰謝料は、精神的苦痛という、目に見えず、本来は金銭換算できないものを金銭で評価するものなので、確たる根拠があって決まるわけではありません。おおよその傾向ないし相場があるとはいえますが、それでも裁判官によって生じる差も小さくありません。
離婚に伴う慰謝料全般の傾向としては、婚姻後の同居期間が長い、未成熟子がいる、当事者に経済力があるといった場合は比較的高額になると言われます。
2 不貞の場合
(1) 金額の傾向
東京家裁の2012年4月~2013年12月までの離婚事件の判決においては、29件において、平均223万円で、100万円~700万円という結果となっています(神野泰一「離婚訴訟における離婚慰謝料の動向」ケース研究322号(2014年))。
岡山県内の高裁・地裁・家裁で不貞慰謝料請求について判断された判決(離婚になっていないケースもある)のうち慰謝料が認められた27件においては、平均216万円、80万~600万円という結果となっています(安西二郎「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」判例タイムズ1278号(2008年))。
2016年12月~2019年2月の東京地裁での不貞慰謝料請求事件の判決(同様に、離婚になっていないケースもある)で請求が認められた130件においては、加重平均値163.5万円で、30万~300万円という結果になっています(大塚正之『不貞行為に関する裁判例の分析』154-155頁(2022年))。
業務をしている実感としては、離婚に至っていないケースでは100万円前後、破綻したり離婚に至ったケースでは150~200万円程度で、一定程度悪質性が強いと300万円以上になってくるというのがおおよその傾向に思われます。
(2) 考慮される事情
判決で慰謝料を決める上で考慮した事情として挙げられるのは、①不貞期間、②不貞の内容・頻度、③婚姻関係への影響、④婚姻期間等ですが、どういった事情がどこまで重視されているかはケースバイケースです。
当事務所で扱った事件において、判決で慰謝料が300万円以上になったのは、
・不貞相手が複数いたケース
・不貞を否認しており、態度が悪いケース
・暴力と不貞の両方があったケース
・賠償義務者の収入が多いケース
などです。
本来的には賠償義務者の収入・資力は精神的苦痛の程度と無関係なので慰謝料額に影響する理由はなく、判決でも明示的に賠償義務者の収入・資力を慰謝料額の理由に挙げられてはいませんが、実質的には額に影響することもあります。
3 暴力が原因の場合
東京家裁の2012年4月~2013年12月までの離婚事件の判決においては、23件において、平均123万円で、20万円~300万円という結果となっています(神野泰一「離婚訴訟における離婚慰謝料の動向」ケース研究322号(2014年))。
比較的高額になるのは、傷害の程度が重いとか、暴力の頻度、対応の悪さなどの事情がある場合です。