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離婚原因として問題になる「別居」はどういう状態を指しますか。時々連絡をとったり、子どもに会って宿泊していても「別居」になりますか。
あくまで婚姻が空洞化しているかどうかの指標なので一義的な定義はありませんが、元の自宅を訪れたり泊まっていても「別居」に当たらないことにはなりません。
1 「別居」が要件となる意味
もともと、離婚原因として別居が問題になるのは、婚姻関係が空洞化しているか、修復が不可能かどうかの指標として用いられているからです。
したがって、単純に一緒に暮らしているかどうかということで判断されるわけでもありません。たとえば、単身赴任のような場合であっても、それはここでいう「別居」とは評価されないでしょう。
2 元の自宅を訪れたり泊まったりしていても「別居」になる
逆に、元の自宅を訪れたり泊まったりしていても、夫婦生活の実態が失われていれば、それは別居と評価されるでしょう。
裁判例を見ても、そのような判断が示されています。
(1) 大阪高裁1980年12月14日判決判時1384号55頁
Y(妻)の宗教活動により婚姻関係が破綻したことを理由とするX(夫)からの離婚請求を棄却した一審判決を取り消し,離婚請求を認容した事例。
同判決は,「被告〔Y〕は,同年〔昭和57年〕一〇月八日ころ,春子〔Xの母〕から聖書に今でも未練があるのではないかと問いただされたので,まだ迷っていると正直な気持を答えたところ,春子は,立腹して別居を求め,春子の電話連絡により原告方へ来た被告の両親に対し,被告を原告方に置いておくことはできないと言った。そこで,被告は,止むなく兵庫県宝塚市内の被告の実家へ戻り,以後,原告や二人の子供とは別居することになった。」「原,被告は,別居後二,三年の間は,原告が被告の実家に被告を訪ねたり,被告が原告宅を訪れたりして何回も話し合いの機会をもった。被告は,昭和五八年一月実家を出て兵庫県伊丹市西野所在のアパートに一人で居住するようになったが,原告が同所を訪れて泊ったこともあった。また,被告は,原告に月に一度の割合で手紙を出し,その心境を原告に伝えた。」「被告は,原告とともに居住している二人の子供達とは一週間に一,二度継続的に連絡をとり合っており,再び控訴人及び二人の子供と同居して生活したい希望を持っており,自分の信仰する宗教の崇拝行為に関係ない限り控訴人及びその母の言うことに従いたい意向を示している。」との事実を認定した上で,諸事実を踏まえて,「別居期間はすでに八年に及んでおり(もっとも,当初の二,三年は両者間に若干の交渉があったが)現実に夫婦関係が円満に回復するという見込みは全くないことが明らかであり,控訴人と被控訴人との間の婚姻関係は既に完全に破綻しているものと認めるのが相当である。」と判示した。
(2) 大阪高裁1992年5月26日判決判タ797号253頁
X・Yは昭和17年に婚姻した夫婦であり,Xが,昭和40年以後,東京において,不貞の相手方及びその子(Xとの子)と同居するようになったが,Xは,月1,2回は,事業のため,Yが居住する元の自宅がある大阪にも来ており,その場合,元の自宅に泊まることを常としていた。Xが元の自宅に泊まった際には,Yは,風呂の用意や身の回りの世話をしていたが,寝室は別で,夫婦関係はなかった。Xは,毎年の正月には元の自宅でY及び同人との子どもらと過ごしており,Xの母(昭和48年死亡)の法事も,元の自宅で営まれた。
上記のような事実関係において,同判決は,「前記認定の事実によれば,控訴人〔X〕と被控訴人〔Y〕との婚姻関係は,昭和40年以降,夫婦としての共同生活の実体を欠き,既に破綻しており,控訴人は,もっぱら東京を本拠として秋子との内縁関係を継続していたのであるから,控訴人と被控訴人とは,控訴人による松崎町の建物〔Yの住む元の自宅〕への立ち寄り・宿泊の事実はあったものの,昭和40年以降別居状態と評価すべきものであり,別居期間は,当審口頭弁論終結時において既に26年余に達しており,両当事者の年齢(控訴人が84歳,被控訴人が78歳)及び同居期間に比べて相当の長期間に及んでいるものというべきである。」と認定判断して,離婚請求を認容した。
(3) 東京高裁2002年6月26日判決判時1801号80頁
X・Yは昭和49年3月に婚姻した夫婦であり,Xが,平成8年3月ころ自宅を出て別にアパートを借りて別居し,そこに不貞の相手方が時々訪ねてくるという生活になり,その後も,子供のことが心配で週に1回は自宅に帰宅していたが,平成9年3月頃からは,不貞の相手方と上記アパート(その後,別のマンション)で同棲生活をするに至り,その頃から週1回の自宅への帰宅もしなくなった。
上記のような事実関係において,同判決は,「別居期間は平成八年三月から既に六年以上経過している」旨認定判断して,離婚請求を認容した。