よくある質問 I FAQ

法律問題の
ご質問とアドバイス

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離婚問題について

Q

風俗店の利用は「不貞」に該当しますか

A

本来的には該当するといえますが、該当しないと判断されている例もあります。

性交又は性交類似行為のサービスを提供する風俗店の利用は、本来的には「不貞」に該当するといえます。
裁判例でも、風俗店の利用が不貞行為(不法行為)に該当すると認められている例もあります(東京地裁2010年2月5日判決、東京地裁2005年6月24日判決等)。

他方で、以下のように、風俗店の利用のみをもっては不貞行為・不法行為に該当しないと判断されている例もあります。

(消極例)
〇 東京地裁2021年1月18日判決
妻が夫の不貞相手(風俗店従業員)に慰謝料請求した事案で、夫が提供を受けた性的サービスは「性的サービスの提供を業務とする店舗の従業員と利用客という関係に基づいてなされたものであり,その際になされた性交渉も,被告とAの従業員と利用客という関係を超えてなされたものとは認められない。」として、以下のとおり慰謝料請求を否定しました。
「風俗店の従業員と利用客との間で性交渉が行われることが,直ちに利用客とその配偶者との婚姻共同生活の平和を害するものとは解し難く,仮に,婚姻共同生活の平和を害することがあるとしても,その程度は客観的にみて軽微であるということができる。
そうすると,仮に,被告とAとの間でなされた本件性的サービスの際の性交渉が,原告の婚姻共同生活の平和の維持を侵害し,不貞行為に当たり得る面があるとしても,それにより,原告に,金銭の支払によらなければ慰藉されないほどの精神的苦痛が生じたものと認めるに足りない。」

〇 横浜家裁2019年3月27日判決
妻が夫に離婚等を請求した事案で、夫が1回デリヘルの性的サービスを利用したことを認定しつつ、「仮にあと数回の利用があったとしても,被告は発覚当初から原告に謝罪し……,今後利用しない旨約束していること……からすると,この点のみをもって,離婚事由に当たるまでの不貞行為があったとは評価できない。」と判断して離婚・慰謝料請求を否定しました。

〇 東京地裁2015年7月27日判決
妻が夫の不貞相手(ソープランド従業員)に慰謝料請求した事案で、夫がソープランド店舗を利用していた時期については、「性的サービスの提供を業務とする本件店舗において,利用客であるAが対価を支払うことにより従業員である被告が肉体関係に応じたものであると認められ,それ自体が直ちに婚姻共同生活の平和を害するものではないから,これが原因で原告とAとの夫婦関係が悪化したとしても,被告が故意又は過失によってこれに寄与したものとは認め難いというべきである。」として不法行為の成立を否定しました(ただし、その後、店外で肉体関係を持っていた時期については不法行為を認めた。)。

〇 東京地裁2015年7月27日判決
妻が夫に離婚等を請求した事案で、「証拠から認定できる事実は,被告が風俗店で遊んだこと,特定の女性とメールのやりとりをしていたこと及び被告が淋病に罹患したことに止まり,これらの事実のみでは,被告が特定の女性と性的関係を持つことにより不貞行為をしたことやこれにより婚姻関係が破綻したことまでは未だ認められないといわざるを得ない。したがって,この点についての原告の主張は理由がない。」として、風俗店の利用をもって有責行為と認めませんでした。

(積極)
風俗店の利用を契機に風俗店従業員と交際を開始したような事案では、慰謝料請求を認めています(東京地裁2018年1月19日判決、東京地裁2016年3月28日判決、東京地裁2016年3月22日判決)。
また、以下のとおり風俗店の利用自体を不貞行為と認めた例もあります。

〇 東京地裁2010年2月5日判決
「被告が風俗店において原告以外の女性と数回にわたり性交渉を持ったこと(なお,このこと自体も不貞行為に該当し,不法行為として損害賠償の対象となり得るものと解される。)については被告本人もこれを認める供述をしており,これに証拠(甲10,13,16,原告本人の供述)を合わせ考慮すれば,被告は風俗店において性交渉を持った結果性病に罹患し,平成17年1月ころには原告に性病を感染させたものと認めることができる(但し,被告が原告に性病を感染させた回数が数回に及ぶこと,及び被告が特定の女性と不倫関係に及んでいたことを示す適確な証拠はない。)。」

〇 東京地裁2005年6月24日判決
離婚請求事件で以下のとおり判断。
「証拠(被告本人)によると,被告は,平成9年2月及び平成13年5月か同年6月ころ,ソープランドへ行ったものと認めることができ,被告の行為は,原告との関係で,不法行為にあたるというべきである。」